花火31

バイト?

ん。翔くん今、昼間は教習所行ってるでしょ?今、俺がバイトしてる所なら、夜だけのバイトで結構稼げるよ

やばくないの?それ

やばくないって、ダイニングバーだし。時間もちゃんと22時までだし

智くんがふにゃんって笑って、メロンパンを齧った。

カクテルの作り方教えてもらえるし、面白いよ?飲めないけど、大人になった気分っていうかさ。ノンアルコールのカクテルとかもたくさんあんの!てんちょーが俺の友達でイケメンなんだったら雇ってくれるってよ

オトナって言葉がひっかかる。

大学生になったらと思ってたけど、それじゃまだ酒も飲めない。まだまだ、ガキな、俺。

あの日から、図書館に行けてない。

しばらく寝込んでたし、その後は推薦入試があって、無事に合格して図書館へ行く理由が見つからなくなって、足が遠のいた。

そんなのは、表向きの理由でしかないって、自分が一番分かってるんだけど。

本当は相葉さんの顔を見るのが怖かった。

今度、お試しで来てみたら?

じゃあ、智くんがいる日に行ってみる

じゃあ、今日行こうよ

んふふって笑って、智くんが立ち上がった。

今日?

善は急げ、でしょ?今日は予定あんの?

いや、何もないけど

じゃ、行こうよ。今から

い、今?!

自由登校だし、学校にいる理由もないっちゃないけど、今の今からって、ハードル高すぎねぇ?

てんちょーのマジックもすげーんだよ

ちょっ待って、智くん!

歩き出した智くんを慌てて追いかける。

マイペースな智くんには、色驚かされることが多いけど、バーでバイトとか、一体どこからそんなことになるんだか

なんかさ、カクテルにも意味があんだって

へぇ

この間はオッサンがお兄さんにカクテル奢って、そのまんまふたりで出ていっちゃってさ

そのカクテルの意味が貴方は魅力的って意味らしくてさ

そのお兄さん、すげー美人だったから、オッサンの気持ちもわかんなくはないけどなぁーって智くんの声が、少し遠くに聞こえる。

なぁそのお兄さんって、どんな人?

少し前を歩いていた智くんが振り返る。

あれ、翔くんって、そっちも興味あり?

ちげぇよ

だけど、なんでか胸がざわつくんだ。

結構よく来てるよ、そのお兄さん。てんちょーの幼なじみとかって言ってたし

今日も来るかもねって智くんの言葉に、どくんって心臓が大きな音をたてた。

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